アニメをプロモーションする上では、そのアニメを試聴するのがどのような層なのかを深く研究することが重要である。深夜アニメが多様化するに辺り、ファン層も多様化しているのだ。
この層を読み違えては、逆効果のプロモーションになってしまうのである。
ここでは過去の具体例を比較してみる。
アニメ視聴者の層を理解する
京都アニメーションは、緩い雰囲気のマンガ『けいおん!』をポニーキャニオン提供でアニメ化し、円盤塁平40000枚という見事な成功を収めた。
ファミリーマートとのコラボを筆頭に一般社会への露出も増え、2011年には映画化も達成。
そしてこの劇場ではチケットの半券を24枚まで貼れる「リピートポイントシート」なるものが配布され、話題を呼んだ。これは、劇場チケット半券を3枚貼ると、映画で使用されたフィルムの一部と交換できるというものだ。
このフィルムというものはすなわち映画のワンシーンであり、それがランダムで手に入るという仕組みである。このうち人気のシーンのフィルムはヤフオクに出品されるほどのプレミアがつき、最高額のものではなんと17万円超で落札された。一般的に同じ映画を3度も映画館で見る人は少ないが、これほどまでのフィルムのプレミア性により24回観に行くというファンも現れた。
――上映日程が後期に入るとフィルムを配布する静画は多くなってきたが、大抵は一回見ればで一枚もらえる。3回で一枚でも人が集まるというは、『けいおん!』のブランド力と言えよう。
本来は上映が終了したら廃棄するフィルムを配布する、というほぼノーコストのキャンペーンで、劇場版『けいおん!』は19億円の興行収入を記録。深夜アニメとしては異例の大成功である。
これは『けいおん!』がすでにブランドとして確立されており、視聴者の購買力が非常に高かったため成功した例であろう。
京都アニメ-ションのスポンサーとしては前述『けいおん!』のポニーキャニオンと双璧をなす角川書店が、2011年に『日常』を放送した。
内容は一見すると『けいおん!』と同じ緩い雰囲気のマンガが原作であり、これは京都アニメーションが『けいおん!』で培ったノウハウを期待してのものだったと考えられる。角川書店はこの新作に強気であり、当初より2クールの枠を確保、首都圏20駅に及ぶ巨大広告の掲示に打って出た。
しかし、蓋を開けると円盤の塁平は3000枚を下回ると散々な結果となった。
『けいおん!』と違い『日常』はギャグマンガ指向のキャラデザでキャラクター人気が出にくいこと、一般大衆が納得しやすいストーリー展開ではなくシュールギャグ系で人を選んでしまうことにより、屋外看板で大人数の目に触れる利点が低かったのが失敗の要因と考えられる。
2012年の『ココロコネクト』の炎上騒動も未だ記憶に新しい。
エンターブレインの人気のライトノベルを原作とし、アニメ化にあたり先行上映イベントが行われたのだが、その内容がファンの強い反感を買った。
その内容は、声優の市来光弘が偽オーディションを受けさせられるというドッキリ企画であり、本人がそれをイベントの壇上で知らされるというものであった。市来は仕事も少なく張り切って練習していた姿が撮影されており、その様子もイベント内で上映、関係者一同はそれを見て大爆笑、本人は困惑。その一連の企画がネット上で「悪質なパワハラ」「まるでいじめ」などと認識され、炎上騒動を巻き起こした。
アニメがニコニコ動画で無料配信された際には「イジメコネクト」「スタッフ謝罪しろ」「しょうもない」などのコメントで埋め尽くされ、「屑スタッフに金落としたくないから円盤は買わない」「いい作品なのにもったいない」「原作者かわいそう」などのコメントも寄せられた。結果、円盤の売り上げは塁平3000枚を下回るという期待外れの数字を招いた。
そもそもこの騒動は一般人でも許容しがたい範囲ではあるが、ラノベファンは特にイジりやイビリに敏感であり、芸人のような笑いの取り方をして話題作りをしようとしたこのプロモーションは大失敗だったのである。
『日常』のプロモーション方法も『テルマエ・ロマエ』や『銀魂』のような直球タイプのギャグ漫画なら効果があったかもしれないし、『ココロコネクト』の手段も『ガキ使』の販促であったなら全く叩かれなかったであろう。
これらの例が指し示すように、ファン層を理解しないプロモーションは逆効果なのである。
続くか未定
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